現在大注目を浴びている水酸アパタイトと呼ばれる成分をご存知ですか?
歯磨き粉や、壁などのコーティング剤、薬用デオドラントクリームやヘアコンディショナーなど、様々な分野で活用されています。
なぜこの水酸アパタイトという成分が注目されているかというと、驚きの消臭効果があるからなんです。
今回は、この水酸アパタイトという成分について詳しく解説していこうと思います。
アパタイトって何?

まず最初にアパタイトについて説明します。
アパタイト、別名燐灰石(apatite)は、リン酸塩鉱物のグループに対する一般的な名称です。
英語のapatiteは、ごまかし、策略を意味するギリシア語のapate に由来しています。
これは、アクアマリンや紫水晶、電気石などの他の鉱物と見間違えやすかったからだと言われています。
馴染みのない言葉で難しい説明になりましたが、化学組成の違いによって色が異なる石というイメージを持ってもらえばわかりやすいのではないでしょうか。
ポイント:アパタイトとは化学組成の違いによって色が異なる石
単に、アパタイト(燐灰石)と言われるものは、フッ素燐灰石を指す場合が多いです。
透明で大きく美しいアパタイトは宝石にもなりますが、そのようなアパタイトは大変珍しく、産出されたほとんどのアパタイトはアクセサリー用に加工されるため、宝飾品としてはあまり適していません。
宝石として扱うことのできない燐灰石の主な用途は、化学肥料の原料や、産業用の化学製品の原料でした。

なんだ。宝石になるならすごいと思ったのに、全然取れないんじゃ別に大したことないじゃん。
このような意見が多く,アパタイトは大して価値のあるものじゃない。
今まではそう思われており大して注目されていませんでした。
しかしながら、アパタイト(燐灰石)の種類の中でも水酸アパタイト(水酸燐灰石)は、近年大注目を集めています。
水酸アパタイト(水酸燐灰石)は、すでに歯や骨の主成分で歯科医療でのデンタルプラントの原料や、歯磨材の原料、人工骨の原料として使用されています。
しかしながら、水酸アパタイトが注目を集めているのはそれが理由ではありません。
水酸アパタイトが注目されている理由。それは、水酸アパタイトに消臭効果が認められたからです。
2017年8月1日に発表された「不快臭成分を効率的に捕集可能なリン酸カルシウム系消臭剤の創成」という論文で、水酸アパタイトの消臭成分が証明されました。
参考文献:https://www.yamagata-u.ac.jp/jp/files/8715/0761/7696/KHK421.pdf
この論文では、リン酸カルシウムの一種である、水酸燐灰石に着目して研究が行われました。
具体的な研究内容としては、結晶性や配向性などの異なる様々な水酸燐灰石を合成し金属イオンやゼオライトと呼ばれる物質と複合させることによってにおいの吸着に優れた消臭剤を作り出すというもの。
難しい説明になったので、簡単にすると
条件の違う水酸アパタイトを様々な物質と組み合わせて消臭剤を作ろう。という研究です。
これまでは、活性炭(炭)などが消臭剤の代表として挙げられていました。活性炭はガス成分などのにおいの消臭ができますが、低分子のにおい成分を消臭効率が悪いというデメリットが存在していました。
低分子の物質はアンモニアガスや硫化水素が例としてあげられます。低分子の物質は蒸発しやすいという特性があり、においが広がりやすいので、低分子のにおい成分を消臭できる物質を見つける。というのは、多くの研究者の課題でした。
その課題を解消することができる物質として発見されたのが、この水酸アパタイトだったというわけです。
水酸アパタイトは、開発の仕方や、配合を変えるだけで様々な効能を持つアパタイトになるため、消臭だけでなく様々な用途があります。
水酸アパタイトにも種類は様々
出典:https://sofsera.co.jp/hap.html
先ほども言ったように水酸アパタイトは応用次第で様々なアパタイトになり、特別な効能を持つようになります。
多くの企業は水酸アパタイトの開発と研究を進め、商品を生み出しています。
ここでは、水酸アパタイトの応用例とその効能を紹介します。
ハイドロキシアパタイト
・研磨材効果
ハイドロキシアパタイトは、研磨材の効果があるとして、歯磨き粉によく配合されています。また、虫歯予防成分も認められています。
・歯垢の吸着除去効果
ハイドロキシアパタイトにはタンパク質吸着能⼒があり、昔から液体クロマトグラフィーの充填剤として使われていました。それを応用した⻭の表⾯の⻭垢や⼝腔内細菌を吸着し除去する歯磨き粉などが生産されています。
・歯の表面の傷修復効果
ハイドロキシアパタイトには歯の表面の傷を埋めて修復する効能もあります。その上歯の表面を滑らかにする効能もあり、歯垢や着色汚れが起こりにくい口内環境を作り出すことができます。
・歯の表面を再石灰化できる
ハイドロキシアパタイトは初期むし歯を再石灰化することもできます。
食べ物の酸により、エメナル質の表層下からミネラルが溶け出します。この脱灰した状態がむし歯の一個手前の状態で、初期むし歯と言います。この状態の時にハイドロキシアパタイトは、ミネラルを補給し初期むし歯を再石灰化することができます。
ハイドロキシアパタイトがあれば、もうむし歯になる人なんていないんじゃないかって言うくらいすごい成分ですよね。実際、ハイドロキシアパタイトを配合した歯磨き粉などは数多く存在しています。
マリンアパタイト
マリンアパタイトとは、ホタテの貝殻を由来としていて身体に馴染みやすく、敏感肌などの人にも使うことができる成分です。
・汚染物質の吸着
マリンアパタイトは肌荒れなどの原因になるPM.2.5やPM0.1等の環境汚染物質を吸着します。そのため、待機汚染物質に夜肌の影響を抑えるための化粧水や乳液などのアンチポリューション製品に活用することができます。
・洗浄力が高い
マリンアパタイトは、泡立ちが非常に良く皮脂除去率が高いという特性があります。
この特性を利用して、シャンプーやコンディショナーに配合することも可能です。
・高い染毛効果
マリンアパタイトには、高い染毛効果があり、カラー剤にマリンアパタイトを配合すると濃く染まるという効果が実験で認められています。
参照:https://www.aperza.com/catalog/page/4690/12650/
・非常に高い消臭効果
マリンアパタイトには非常に高い効果が認められています。身体に無害という特性があるので、デオドラントクリームなどに配合しても肌がかぶれないというのもマリンアパタイトの魅力的なところですよね。実際にマリンアパタイトを配合したデオドラントクリームはすでに販売されています。
参照:https://kenko-seikatsu-ichiba.com/lp?u=shellmell
マリンアパタイトは身体に馴染みやすい生態親和性が非常に高いので、これからも多くの商品の開発が進むことが期待されます。
まとめ
いかがでしたか?水酸アパタイトは様々な成分と組み合わせることで多くの効能を持つ期待の成分です。特に今回紹介したハイドロキシアパタイトとマリンアパタイトは、すでに実用化されていて、成分を配合した商品として販売されています。これからも水酸アパタイトの研究と開発はどんどん進んでいくことでしょう。
今回はここまでにします。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ではまた。
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